間違いないわ

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間違いないわ

 高校を卒業して、就職するまでの期間は気分的にかなり安堵感にひたれる。  …今までが忙しすぎた。  思えばガキの頃から安堵感に浸れる時なんて数えるほどしか無かったように思える。  例え一瞬でも、裕子との安らぎや幸福感のようなもの…  …そんなひと時を過ごせただけでも幸せやったなぁと思う。  …早朝に起きての新聞配達も無くなったし、期間限定の郵便配達もしなくていい。  夏と真冬の魚卸売り市場にも行かなくていい。  …うどん屋にも行かなくて良くなる…  これは寂しいが(笑)  ☆かなり時間が出来そうだ☆  そして元々、手先が器用だったのと、美術部にも ちょこちょこ顔を出しては引っ掻き回し、  バスケ部のキャプテンに戻ったりしながら自由気ままな高校生活だった。  そのせいかどうかはいざ知らず、意外に、各企業からの申し出があったのには、驚きと嬉しい気持ちでいっぱいだった。  ラッキーな事に、憧れの会社に内定が決まり、 出社日までの一ヶ月に及ぶ休みを満喫すべく計画を練るが…  …タイミングが良いのか悪いのか、ばぁちゃんが倒れるハプニングが有った。  卒業式を無事終えた次の日のことだった。 いつものように、バイトをしている最中に、例のホール係の女の子が怪訝そうな顔で、俺に……  「☆電話やから、早く代わって!☆」  と、ホール係の子は俺の一歳下だ。名は小夜子と言う。  セシルカットの似合う可愛らしい子だ。  その常に明るい愛想の良さで、店のみならず、お客様まで彼女のファンが多い。  その小夜ちゃんが、珍しく眉間に皺を寄せているので、不思議に感じながら…  (何やろ?…ちと怖いなあ…。)  と、思いながら親父っさんと目があった。  厨房内で、親父っさんに会釈をしながらカウンター角にある、電話に向かった。  親父っさんが小夜子に、「何や?」と聞いた。  「拳チャンに電話て……警察か?(笑)師範か(笑)?」  と、ろくでもない親父っさんである…。  小夜子は、この思いも寄らない素っ頓狂な質問と、例の関西お笑い芸人の剥き出たデカい眼をして聞くものだから、  小夜子の険しい顔が笑った。  俺は、そのやり取りを見ながら、  (親父っさん、さすがやな(笑) 俺も 見習おう(笑))  と、思いながら受話器を上げた。親父っさんは…  「さょちゃん?(笑)……警察ちゃうし…師範ちゃうし…誰?(笑)」    
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