何事にも在るもの。

4/10
前へ
/30ページ
次へ
ふらふらと、いつもの見慣れた地平線に小さな影が現れ、それは近づいてくるにつれ、人の形をとりつつあった。 「なんだ?」 目を細めた青年は、村の一番端に向かう。 青年がたどり着いた時、村で一番大きな木樹の下に踞る老人の姿があった。 「お・・おい!じいさん。」 青年にとって初めて、村人以外の人間だった。 「はぁ。やっとたどり着いた。」 老人は、青年の言葉には反応せずに、深いため息と共に、言葉を吐き出した。 「じいさんは、こんな所を目指してきたのか?」 ゆっくりと老人の背中に自分の上着を被せながら、青年は聞いた。 「ふふふ。こんな所か。」 青年の言葉に、柔らかな笑みを老人は浮かべた。 「わしは、ここにいるお前さんを目指してきたんじゃよ。」 老人の言葉に、青年が狼狽する。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加