何事にも在るもの。

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村の外からの来訪者。 そして、その老人が残したもの。 オルにとって、幼い時から持っていた違和感が、形となるには、十分な要素だった。 光の沈む所からやって来た老人は、鈍い光の 金貨をオルに託した。 「外の・・・世界。」 オルは、ひとつの思いに捕らわれた。 それは、村の誰もがしない。 村の幸せを・・放棄する事。 「俺にとって、幸せか・・・?」 オルは真剣に悩んだ。 畑を耕しながら、家畜を世話しながら、空を見つめて。 数日がすぎ。 その日は生憎の雨で、オルは部屋にこもり、ありったけの本を読んだ。 村長に無理をいって借りた、かなり古い本だ。 しめっぽいカビの臭いに顔をしかめながら、オルはページをめくる。
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