星降る夜

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「午前零時一分前です。先輩はご存知ですか?この時計壊れてまして昼でも夜でも鳴るんですよ。かわいいお人形さんが出てきて、曲にあわせて踊るんです」 「知ってる。たしか近いうちに修理されるはずだった。まあ結局中止になっちゃったけど…」 「けど…ラッキーです」 「え?」 ♪♪~~ 突然時計からゆったりとしたワルツが、人形が、流れ、動き出す。 ののかは演奏が始まるとゆったりした動作で振り返り、スカートの両端を指で摘むと、少し気取った口調で 「Shall we dance?」 一瞬思考が止まりそうになった。けどすぐに復活。だって答えはもう決まっていたから… 「Yes,let’s」 俺達は踊り始める。 作法なんて知らない。 ステップなんてでたらめ。 でもそんなこと、関係なかった。 今はただ踊り続ける、世界の終演へと上り詰める最後のカデンツァを… 「ーーーッ!」 一瞬、ののかの顔が悲しげに歪んだように見え、そして抱き着いてきた。 ……震えてる。 服ごしに僅かに、でもはっきり伝わってくる。彼女の気持ち。 泣くまいって、泣き顔は見せないって、最後まで笑顔でって気持ち。 「……寒いのか?」 「ちがいますよぉ…せんぱいの…ばかぁ」 俺はののかの小さな背中に手をまわすと強く、強く抱きしめる。 「さいごは、さいごまで、ぎゅってしてて…ください…」 空を見上げれば流れ星のシャワー。 ああ…今夜は本当に空が明るい。 流れ星達はまるで きみの流す涙のよう… END
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