患者との出会い

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佐々木が回診で廻っているとき、佐々木の同期の諸岡祐一が白衣を着てカルテを見ながらナースに聞いた。 「おはようございます。佐々木先生ならあと少しで終わって戻って来ます。」 ナースが説明をし終えたと同時に佐々木が戻って来た。 「あれ?やけに早いな諸岡。そのカルテは誰のだ?」佐々木は、諸岡からカルテを渡してもらい驚いた。 「患者は、岸…春奈‼症状は⁉腎不全だと…諸岡、詳しく頼む」佐々木は諸岡にカルテを渡してイスに座り込んだ。 「…佐々木。彼女は今日から我々が担当する事になった。なお、彼女の担当医はお前だ。既に血液透析をしている。」諸岡は冷静に話しを進めた。 佐々木は、ポケットからタバコとオイルライターを取り出し火をつけた。 「ふぅ~。彼女がここに来ると言う事は腎移植だな?よくドナーが見つかった。」(医師とは何のために…)佐々木は外を眺めながらぼんやりしていたが、諸岡により現実に戻された。 「ドナーは、彼女の母親だ。彼女の命はお前の腕にかかっている。」 「諸岡…春奈は何号室にいる?会って来る」 「彼女は、208号室だ」 俺はそれだけ聞くと病室に急いだ。 『コンコン』ノックをしてから入室した。そこには、透析機をつけた春奈がいた。「…久しぶりだな。春奈」 「佐々木君?」 春奈が起き上がろうとしたが俺が止めた「無茶をするな。ただでさえ体が弱っているんだから」 「ゴメンね。佐々木君。まだ、怒ってる?」 大学時代、付き合っていたが春奈が急に違う男にくっつき別れた事だろう。 「いや、別に。」 そこに春奈の親が入って来た。 「おはようございます。岸さん。」 俺は頭を下げてから母親と春奈に術式を詳しく解説することにした。 「お母様がドナーで春奈さんがレシピエントと言う立場です。まず始めに、お母様の右腎を摘出し、春奈さんの腎臓として機能させます。執刀医は、私です。」俺は改めて頭を下げた。 すると、急に春奈の父親が鞄から布包みの物を渡して来た。俺には中身が分かった。金だ。 「失礼ですが、私は受け取りません。法に違反します。」 内心、何故?とも思った。そんなことは漫画の世界だけにしてくれ。 「手術は、三日後に行います。一緒に頑張りましょう」 それだけ言うと個室を後にした。
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