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「そんな筈ありません! 領主や騎士は、民を守るために……!」
「現実なんて、そんなもんよ」
そんな……。
「上流階級が平民、貧民をゴミみたいに扱うなんざ、ありきたりな光景だろ」
「ゴ、ゴミ……?」
「……本当に何も知らないな。まさか、さっきの奴が言ってた通り、お前……」
……隠し通せるのか? 確かに俺は、世間知らずだ。
このまま隠していても、いつか……気付かれるだろう。
「兄様は本当に次期国王ですよ」
って、人が色々考えてる矢先に何を先に口走ってるの、この子!
「リリシアー!」
「は、はい! なんですか、どうされましたっ?」
「お前、もう黙っててよ、頼むから! お願いだから!」
「は、は、はいっ」
「……なんで王子様が、騎士に追われてるんだ?」
……え?
「殺さない……のか?」
俺の言葉に男は頭を掻きながら困ったように答えた。
「いや、なんか事情が違いそうだしなぁ……それにもう一つの理由は、王子がこんなところにいるなんて思わねえし?」
「そうか……そりゃ、信じないよな」
うん、よかった。まだ命は助かりそうだ。
「取り敢えず、あれだ。ガキがこんな所にいちゃ危ねえ。俺等のアジトに来いよ」
「……そんな事を言って、俺達を無事に帰すつもりはないんだろう?」
リリシアを抱きしめて相手を睨み付けながら言ってみたが、野党は笑い出した。
「おいおい、俺等をそこらの野党崩れと一緒にするなよ? 言ってやれ、お前等!」
「おう! 奪いはするが住民にゃ手は出さねえ!」
「殺すのは王族、貴族だけ!」
「余分には奪わず、その日食っていく分だけ!」
仲間達が言うと頭と思われる男が胸を張って言った。
「これが俺等の誇りよ。だから、子供には優しく、な?」
「は、はぁ……」
男を見上げながら、俺は今までとは別種の不安を覚えていた。
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