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「走れ……早く! リリシア……!」
「ま……待って……っ」
足が、もつれる。
もう一日中、走り通しだ。俺ですら息をするのもやっとなのに、女であるリリシアにはもっと辛い筈だ。
せめて隠れる場所でもあれば……
ん?
「…………」
立ち止まり、背後を振り返る。
追っ手は……見えないな。
「兄様……?」
「……あそこの洞穴に隠れよう。やり過ごせるかも知れない」
「……うん」
「…………」
無言でリリシアの手を引いて、洞穴に連れていく。
……やり過ごせたら、いいよな。本当に……。
半分、神に縋るような気持ちで俺達は明かりも届かない洞窟に――足を踏み入れた。
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