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…………。
妹の口を手で覆って洞窟の奥、光の届かない方へと庇うように抱いてやり過ごす。
しばらくして、馬の足音が近付いてきた。
来るな……!
洞窟の入口近くで音がした。
心拍数が跳ね上がる。
散々走り回って息苦しかったのにまだ上がるか、こいつは。
腕の中でリリシアが震えながら、俺の服の袖を握りしめた。
父の首を討ち取ったのなら、もういいじゃないか。
俺達は王位なんかいらない、復讐だってしない。
だから、もう見逃してくれ……!
足音が、どんどんと近付いてくる。
思わず潜めていた息を、完全に止めた。
本当に息の仕方を一瞬だけ忘れていた。
……来るな……来るな、来るな、来るな、来るな……っ!
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