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「おい」
「――――!」
洞窟の奥から聞こえた言葉に慌てて振り向く。
腕の中のリリシアは、口を押さえられていて声は上げられないものの、今までよりも震えながら俺にしがみついた。
声を掛けてきた男性は大柄で、整えたことが一度もないのかと思える程に乱雑……土までついている。
なんて不潔なんだ。そういえば、俺もリリシアも昨日から汚れを落としていない……気持ち悪いな。
「なんだって、ガキがこんな所にいるんだァ?」
「…………っ」
男が右目だけで、俺達を値踏みするように見つめてくる。
左の瞳は死んだ魚のように白く濁っていた。
分からないけれども……何か、良い人間ではないと、直感でそう思った。だから、自分達も危険だと……思ったんだ。
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