The second name

4/19
前へ
/262ページ
次へ
「おい」 「――――!」  洞窟の奥から聞こえた言葉に慌てて振り向く。  腕の中のリリシアは、口を押さえられていて声は上げられないものの、今までよりも震えながら俺にしがみついた。  声を掛けてきた男性は大柄で、整えたことが一度もないのかと思える程に乱雑……土までついている。  なんて不潔なんだ。そういえば、俺もリリシアも昨日から汚れを落としていない……気持ち悪いな。 「なんだって、ガキがこんな所にいるんだァ?」 「…………っ」  男が右目だけで、俺達を値踏みするように見つめてくる。  左の瞳は死んだ魚のように白く濁っていた。  分からないけれども……何か、良い人間ではないと、直感でそう思った。だから、自分達も危険だと……思ったんだ。
/262ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1097人が本棚に入れています
本棚に追加