The second name

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「ここか!」  悪い事は、人を嘲笑うかのように連続で襲ってくる。  そう、俺達は王立軍の騎士に……見つかった。 「なんだ、お前等っ?」  片眼の男が、何故か俺達二人を庇いながら、前に立つ。  なんで……? 「そのローブの紋章……てめえ等、王立か!」 「……小汚い野党崩れが。その子等を庇うと、為にならんぞ」  軍を率先している男が言うと、背後に控えた騎馬兵の二人が一斉に剣を抜き放つ。  それに対し、片眼の男性は鼻で笑うだけだった。  これが、野党なんだ……。  じゃあ、ここで助かっても……俺とリリシアは結局、殺されるんじゃ……っ。 「剣が怖くて、野党なんか続けられるかよ」  男が笑いながら言うと、指笛を吹いた。 「な……!」  騎馬達の足元が土埃を上げて、正体を表す。  馬はいななきを上げ、軍隊は虚をつかれてざわめきながら、罠の網縄に吊し上げられた。  ……王立軍を、こうも簡単に罠に嵌められるものだろうか……。  リリシアも呆気に取られている。 「いい眺めじゃねえか。ええ、兄弟?」 「国の犬が犬っころでも逃げられそうな単純な罠に嵌まりやがった」 「馬鹿じゃねえの!」  周囲の岩影から、みすぼらしい姿の男達がちらほらと顔を出して、吊された騎馬軍を見上げて嘲笑う。 「貴様等! 我々に逆らう行為がどういったことか、分かっているのだろうな!」  二人を率先していた男が言うが、野党達は笑い出した。  ……なんで? 「お前こそ、そんな所で宙吊りになったままで、どうやってママのとこに帰るんだ?」 「どんなママだ? ブチ」 「こんな腹して椅子に座りゃ床も抜けるママだ」  太った男性が腹を叩いて言う。 「愚弄するか!」  なんにせよ、助かった……のか? 「おい、お前等。こいつ等と追い掛けっこでもしてたのか?」 「え……」  追い掛けっこというか、命を狙われてたんだけど……。 「なんだ、違うのか?」 「いや……追われては、いた……」  正直、野党なんかに話していいものかどうか迷ったが……どちらにしても、絶望的なんだ。  だったら、もう……考えるのも、無駄だと思った。
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