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その瞳に浮かべた、冬の空気よりも研ぎ澄まされた眼光。
「どーですか!誠治郎お手製ロシアンクッキー!!
六枚中一枚がハズレ!!食べたらそこの伊藤さんのようになります!」
高らかに宣言する店主に、奈桜は奥歯を噛み締めた。
渡された六枚のクッキー。
一枚はハズレ。
しかし……これでは……
「確実に一人で六枚食うだろう。
いずれ当たって当然だ。」
……………店主が。
ポカンと天井を仰いだままで固まった。
「……そうだよ。
六人いて一枚ずつ配るならともかく……。「一人六枚・かならず一枚ハズレ有り」じゃいつか食べる……こんなのただの嫌がらせだぁ。」
伊藤さんを介抱する翔哉の涙ながらの言葉。
クッキーを口にした彼もまた、六分の一の確率で伊藤さんと同じ目にあっていたのだ。
霧生は……対峙する三人をぐるりと見渡すと……
膝に手をつき、ペコリと頭を垂れた。
「すいませんなんか……手違いです。」
クリスマスサプライズのロシアンクッキー。
それはその後、全て霧生の口に押し込まれ……
被害者は、伊藤さん一人でおさまったそうだ。 ★★★★★
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