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そんな彼に、バクはほのかに暖かい竜を腕に抱えてケラケラと明るく笑った。
「大丈夫だて。奴ら打たれ強さだけは保証付き。サンタさんはここで待っとりゃいいの☆」
「んー…あ、じゃあ……さ。」
呑気な彼女の言葉に、ティナは何か思い付きペタンコの袋を漁り出した。
そこから引っ張り出されたのは、子供達へのプレゼント……ではなく……。
「……僕から感謝の意を込めて。
後で……彼らに渡しといて。」
「……自分で渡せばいいがね?」
腕に託される贈り物に少女は首を傾げるが、ティナは照れたように頭をボリボリ掻きむしるだけだった。
そんなやりとりが頭上で繰り広げられている事など考える余裕もなく。
数階下の階段では……
「翔ぉぉお!?傾く!!も少し持ち上げろってば!」
「無理言わないでよ!!もう限界!目玉飛び出しそう!!」
奈桜の怒声に、翔哉が目玉ひんむいていた。
「そも身長差がありすぎんねや!!
真横に持たんとどっちか先昇りい!!」
「誰がチビだぁぁあ!!?」
「騒ぐなッ!チビなんて言ってないだろうがッ!!チビ!」
奈桜と翔哉の身長差故、横に並べばどうしても翔哉側に荷物は傾ぐ。
アンバランスにぐらつく精密機械を落とすまいと、箱の真下では伊藤さんが両腕あげていざという時の落下に備えていた。
「やぁぁかましぃ言うとるがな!!
階段は声響くねん!!静かにせぇ!」
「そういうアンタが1番うるせェ!」
「なんの役にも立ってないくせに!!」
「なんやと!?」
非常階段に響く声。
幸いにも、マンション各戸の扉は分厚いらしく誰も様子見に出てきはしないが。
「ワシ役にたったやろ!!トナカイになったウサギやで!?どんな出世や!?」
「つーか靴下取れよ!おかしいんだよ、その耳!」
伊藤さんの耳には、相変わらず茶色い靴下がハマったままだ。
奈桜は重たい荷物に顔をしかめながらも無理に笑いを浮かべ、箱の下にチョロつく伊藤さんを蹴り飛ばそうと足をのばす。
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