古書堂のサンタクロース

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白から黄へ 黄から朱へ 色を帯び始めた空に、外の気温は一気に下がる。 いつの間にか雪は止み、マンションからようやく外へと抜け出した一行は澄み切った冬の早朝の空気を肺目一杯に吸い込んだ。 体の中を巡る冷たさに、頭の奥がキンと冴える。 「終わったな~~。なんかバタバタしたけど。」 「過程が慌ただしかったよね……プレゼント届けるのは難なかったのに。」 奈桜と翔哉は、綺麗にグラデーションのかか空を見上げて背筋を伸ばす。 目的も完全に果たし、揃ってソリへとぞろぞろ引き返す中、突然ティナがなにかを見つけて駆け出した。 「エンプレオ!!帰って来てくれたんだ!」 「えんぷれお?」 うれしそうにソリへ駆けていくティナが発した耳慣れない名前に、一同は首を傾げる。 その先には……トナカイが。 ここにいる、耳には靴下はめた偽物じゃなく。 本物のトナカイがソリの傍らに佇んでいた。 「ほら、最初に言ってた気性の荒いダッグスチャーだよ!帰ってきてくれたんだね~~」 「まてまてまて。名前変わってるじゃねぇか。」 トナカイの首にしがみつきほお擦りするティナに、奈桜が遠慮がちに挙手しながら突っ込んだ。 たしか最初はマスなんとかだったはず。 さっきはエンプレオで、今はダッグスチャー。 「気性が荒いっていうか……」 「ティナはんが名前覚えへんから、どっか行ってまったんやろ……。」 一人喜ぶティナに、翔哉と伊藤さんは疲労感が一片に押し寄せたらしく肩を落とした。 空は急速に明るくなっていく。 イブの夜は、完全に明けた。 「……じゃ、僕そろそろ行かなくちゃ。」 「来年は一人で頑張りなよぅ。」 翔哉の言葉に、ティナはやっぱり頼りなく笑う。 来年もダメなんじゃなかろうか。 ………それなら、また共に空を駆け回るのもいいかもしれない。
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