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「ホントにありがとう。じゃ……よいクリスマスを。」
「おぅ。ワシらもチキンが待ってんねや。ティナはんも頑張りぃや。」
「あ!そうだチキン!!」
「ケーキもあるよ~~帰ってクリスマス会だ!」
引き手たるトナカイを取り戻したティナはソリを進め。
手を振る彼の言葉に、本来古書堂に集結した理由をようやく思い出した二人は、今までの疲れなど忘れたかのように騒ぎ出す。
向こうでは霧生がまっているのだ。
現実世界のイブはまだこれから。
地を離れ、空へ旅立つ新米サンタに皆は勢いよく手を振り送り出した。
涼やかな鈴の音を残し、ソリはどんどん上空へと上っていく。
……………その去り際。
声が届くかギリギリの距離で、ティナがふいに振り返った。
「バクちゃん!「アレ」よろしくねぇ☆」
その声を残し。
ティナを乗せたソリは、白く輝く空の中へと消えていく。
「あれってなんや……?」
「さぁ……あ。電話かけねぇと。」
残された台詞に首を傾げる伊藤さんと翔哉。
その横で、奈桜はポケットから今回鳴る事のなかった電話を引っ張り出すと古書堂へと繋ぐ。
バクだけが。
服に隠した「あずかりモノ」を手探りで確認し、にんまりと笑っていた。
「「はいはい~。お疲れ様です。
お仕事完了ですか?」」
「おぅ。そーゆー事。さっさと帰してくれ。腹減った。」
ごく短いやり取りで用件はすぐさま伝わったらしく、あっけなく通話は終了した。
渦が現れるのを待つ間、寒さに身を縮めた伊藤さんがバタバタと足踏みをしている。
そんな中、翔哉はそっとバクに並ぶ。
頭に乗っかった竜も身を丸める寒さの中……彼は、顔だけが異様に温度上昇していくのを押さえられなかった。
呼吸がつまりそうな緊張感を気力で押しやり、そっと口をひらく。
「バクも……良いクリスマスを。
ホントはその……一緒に……過ごせればいいんだけど……」
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