古書堂のサンタクロース

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勇気を出した言葉だった。 輝くような朝の白い空気の中、黒い渦が場違いに現れ……少女は翔哉の顔を見る。 真正面から。        じっと。 「…………ウチはチキンは食べれんて。 あ~でも、兄さんとなら綺麗なイルミネーションを見に行くのもいいかも~~☆」 「…………あれ?どうした翔。        雪の上によつ足ついて。」    しくしくしくしく。 「いいんだ!!いいんだよ!!さあ帰ろう!チキンが僕らを待っている!!」 「???」 「………若いのぅ……。」 翔哉は、奈桜と伊藤さんの腕をひっつかむと口を開けた黒い渦へと向かっていった。 普段ありえないような力でズルズルと二名を引きずり、現実世界への扉に半身突っ込んだ、その時…… 「チビ太!」 バクの声。 それと共に、なにか柔らかいものが顔にあたる。 反射的に引きずっていた伊藤さんを手放しソレを掴めば…… 「手袋??」 それは、真っ赤な手袋だった。 「ティナティナから感謝のキモチ! 兄さんとウサウサにも!」 次いで奈桜と伊藤さんの元にも、似たようなモノが投げ渡される。 渦は彼らを飲み込み……口を閉じようとしていた。 「あ。さっきの「アレ」って……」 「メリークリスマス!!」 渦の向こうへ消え行く少女。 サンタ衣装の彼女は、目一杯に声を張り上げ手を振っている。 「最高に楽しいイブだったて!」 その声は、闇に掻き消され。 訪れる浮遊感に、三人はそっと身を任せた。 「確かに……ま、楽しかったかな……」 「そーだな。」 闇の中、誰からともなく呟いた言葉。 トナカイに逃げられた新米サンタ。 来年は……うまくやるだろうか………。
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