1157人が本棚に入れています
本棚に追加
★★★★★
「クリスマスプレゼントぉ?」
「はい☆」
いい加減ちゃぶ台の上に並ぶ料理も片付いた頃。
霧生から、三人に小さな包みがプレゼントされた。
透明なビニールに包まれたのは、かわいらしい形をしたクッキー達。
「やた――――☆クッキーだぁ☆」
「気の利いたことするやないか、誠治郎はん。」
「………………。」
翔哉と伊藤さんはさっそく包みを開け、奈桜だけは渋い顔で袋を睨み付けている。
甘いものは苦手という彼だが……
「なんや奈桜はん、せっかくのクッキーぐらい食わへんか。」
「いや、なんか……」
何か違う感覚に、背筋がザワリと逆毛立つ。
そんな奈桜の目の前で、伊藤さんは無防備に口の中へとハート型のクッキーをほうり込んだ。
袋の中には計六枚のクッキー達。
さらに隣では、翔哉もまた笑顔でクッキーを頬張り……
「おいひーい☆」
サコサコと軽快な音と共に頬を膨らませた。
その姿に、奈桜が警戒心を解きクッキーの包みを開けようとした時……
「ぶにょげはぁぁあ!!」
「!!」
「いと……え!?」
伊藤さんが、突然奇声を発して畳みにぶっ倒れた。
驚愕する奈桜と翔哉。
霧生だけが……にやっと笑う。
「伊藤さん、ど……どうし……ッ」
「にっっっがぁぁぁぁい!!辛い!!わけわからへん!!あたたたたたた!ベロが痛い!!」
悶え苦しむ伊藤さんを抱え起こし、翔哉がオロオロと冷や汗を吹き出す。
傍らに転げた五枚のクッキー。
奈桜が感じた「嫌な予感。」
「霧生……」
「ふふふふ……」
伊藤さんと翔哉を背後に庇い、奈桜は店主を睨み付ける。
クリスマスムード一変、緊迫した古書堂の空気。
雪までは降らないものの、ヒヤリと冷たい冷気が扉の隙間から滑り込む中……
霧生は、腕を組み胸をはる。
最初のコメントを投稿しよう!