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 討伐隊の名目上の隊長は赤い鎧の剣士だが、エルフにとって、ビィは主君として位置づけるに値する存在なのだろう。  だから信用していた。尊敬していたのだ。少なくとも、この瞬間までは。  ついにセシリアの涙が音もなく溢れると、ビィはやっと身を離した。セシリアは荒い息で肩を上下させながら精一杯ビィを突き飛ばして、彼の腕から逃れる。ふらふらとした足取りで彼から離れて、涙を手の甲でぬぐった。意識が朦朧として、ひどく情けない気持ちで一杯だった。  ビィは何も言わずにセシリアを見つめている。 「な、なんで…こんなこと…」  返事を聞く気はなかった。  何度もつまずきかけながらビィとの距離を広げて、やっとバドの寝床までたどり着く。追って来る気配はなさそうだった。 「バド…」  バドの姿を確認すると安堵して、セシリアはその場に座り込んだ。誰かのいびきが聞こえてくる。  セシリアはもう一度、口唇をぬぐった。
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