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「お前も食べて来い。人の形をしたハイエナが狙ってるぞ」  横に座っている黒髪の剣士が目で促す。 「あんまり、お腹すいてないよ。ビィこそ」 「私はさっき食べた。食べれる時に食べておけよ」  ビィが敵襲を示唆しているのかと思ったが、彼の視線に別の意図が含まれているような気がしてセシリアは焚き火のほうを見る。談笑の中で、アシュリィの盗み食い未遂が発覚してバドと言い争っていた。  バドがたまりかねて、肉や野菜が盛られた皿を持ってセシリアのほうへやって来る。 「セシルの分。例の奴が狙ってるから、お早めにどうぞ」  ため息混じりにそう言ったバドの顔がおかしくて、セシリアは「気をつけるわ」と言いながら皿を受け取った。まだ白い湯気が立ち上っていて、その匂いをかぐと自然と食欲が湧いて出る。 「バド、抜け駆けすんなよ!」  アシュリィが、焚き火のほうへ戻ったバドの腕に肘を当てる。  バドとアシュリィは、ただ「セシリアの許嫁者(いいなずけ)だから」というだけで、この旅の本当の意味もよく理解しないまま仲間に加わっていた。「許嫁者」という関係も親同士の勝手な口約束で成り立っているにすぎない上に、二人を競わせて、「どちらかがセシリアを…」などという発想は
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