01 はじまり

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「これじゃあ進学どころか、生きていけるか心配ですよ」 難しい顔をした先生を前に、私の隣にはお母さん。見ての通り進路についての三者面談。そして先生が放った一言は、まるで死刑宣告だった。 当然のように順番を最後に回され、人気のない校舎でなんの光もない進路について、私は話さなくてはいけなかった。 進路室は、言い様のない張りつめた沈黙だけが流れている。何を言われるか、なんて大体想像はついたけど、目の前にするとやっぱりショックだ。 「いや、何かの間違いでしょ、先生!? こんなゆとり教育の真っ只中で、行く高校どころか生きるのも危ないって!」 「お前が『ゆとり教育』なんて言葉知ってたなんて……成長したな」 「突っ込むところちがう!」 目に涙さえ浮かべそうな先生に、私はツッコミを入れた。 あぁ、隣でいまだになにも言わず黙っているお母さんが怖いよ。
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