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ワゴンの中にはサンタクロースがいた。
赤い服を着て、赤い帽子を被り、帽子の中からは真っ白い巻き毛、真っ白で長い鼻髭と顎髭をつけたおじいさんだった。
「メリークリスマス。素敵な日になりますように。」
サンタクロースはにっこり笑って、私の手に小さな紙袋を持たせてくれた。
「…ありがとう」
私はかすれた声で静かに言った。
夢だった、あの石が今、私の手にある。
私の手が震えた。
紙袋をそっと開けると、中からもっと小さな布製の巾着袋がでてきた。
震える手で、巾着袋をとる。
私は悠太を見た。
悠太は笑って頷いた。
巾着袋をそっと開けると、中から小さな石がでてきた。
透き通った濃い青の石…。
私は震える掌でギュッと石を握りしめた。
思わず涙がこみあげた。
悠太はポンポンとわたしの頭をたたいた。
「朱李、観覧車乗ろ。」
一時間待ってようやく乗れた観覧車からは、遊園地全体が見渡せた。
至るところに飾られたクリスマスツリーやイルミネーションが、私たちの気持ちまで明るく、クリスマス色に照らしてくれる。
しばらく無言で外を見ていた悠太は、ふと気がついたように、私の向側の席から隣へと移動した。
そして、私を抱きしめた。
「朱李、ありがとう。楽しかった。俺、今すげぇ幸せ。」
「私も…。」
「その石、俺が一緒にそろえるから。何年かかったって、一緒にここに来よう。…愛してる。」
「私も…愛してる。」
私たちは、静かに唇を合わせた。
その帰り道、私たちは家とは違う方向へ向かった。
クリスマスのイルミネーションのように明るい通りへと消えた。
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