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私と悠太がつきあってから2年目の夏。
私たちは高校3年生になっていた。
悠太は陸上で有名な、東京都内の大学を希望。
私は自宅から通える範囲の県内の大学を希望していた。
はっきりと志望校が決まったこの頃、私たちの中に焦りがみえはじめた。
お互いに離れたくない。でも志望校は変えられない。
私は会う度に悠太に八つ当たりした。
「悠太も県内の大学いこうよ。」
「陸上ならどこでもできるじゃん。」
「私と離れるの平気なんでしょ!」
八つ当たりされても悠太はいつも優しかった。
「大丈夫だって。離れても、俺は変わらない。距離は少し離れるけど、電話は毎日する。週末だって会いにくるから。」
いつもなら嬉しい悠太の優しさが、腹立たしかった。
私は興奮のあまり、つい言ってはいけないコトを口に出した。
「いつも大丈夫って言うけど、どこにそんな確証があるのよ!
悠太は、適当にその場をごまかせればいいとか思ってんでしょ!
真剣に考えてくれてない証拠じゃん!
陸上なんて、どこでやったって同じじゃない。オリンピックに出れるワケじゃないし。
将来のないものにそんなに熱くなる必要ないよ!」
言ってしまってから私は口を押さえた。
悠太の顔が悲しそうな表情になった。
悠太は私に背中を向けた。
「ゆ、悠…。」
次の瞬間、悠太が振り返った。
たった今悲しげだった悠太の顔は怒りの表情に変わっていた。
こんな悠太の顔は初めて見た。
私はドキッとした。
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