危機

5/5
前へ
/48ページ
次へ
私は沙希に昨日のコトを全部話した。 沙希は、時折頷きながら黙って話を聞いてくれた。 私の両親は、私が小学2年生のトキに離婚した。 私はお母さんに引き取られ。 『朱李はお母さんにみたいになっちゃだめよ。理解のある旦那さんを見つけて、結婚しても自分のやりたいことをやるのよ。』 お母さんは、いつも私に言う。 離婚の原因は自分にある。自分は仕事に一生懸命だったけど、お父さんは、それが嫌だった、とか。 そこで意見が食い違っちゃって毎日ケンカが絶えなかったみたい。 確かにその頃、お父さんとお母さんはよくケンカしてた。 お母さんは今でも言う。 『あの頃は朱李には悲しい思いばっかりさせたね。でも、お母さんは、朱李と一緒にいたくて裁判でやっと朱李の親権を手に入れたの。』 私が地元の大学を希望する理由はソコなんだ…。 そうでなければ、とっくに悠太と同じ都内の大学受けてる。 でも、このコトはお母さんに言ってない。 お母さんは 『朱李の行きたいトコに行きなさい』 っていつも言ってる。 今まで一人で私を育ててくれたお母さんを、一人になんてできなかった。 私が話し終えた後、沙希は少し涙を浮かべていた。 「仕方ないのかな。…遠距離覚悟で戻れればいいんだけど…。」
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加