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土曜日。
私は陸上競技場にいた。
今日は男子10000メートルの試合がある。
応援スタンドにも聞こえてきそうなランナーたちの息づかいに、少し眉間にしわを寄せながら、私は黒沢悠太の走る姿を目で追った。
最終周を告げる鐘が鳴り響く。
黒沢悠太は先頭集団にいた。
一気にラストスパートがかかり、スピードがあがる。
周回遅れの選手と重なって、よく見えない。
私は手を顔の前でくんだ。
「あっ‼」
混み合った集団の中で、足がからまり黒沢悠太が転んだ。
なかなか立てない…。
その間にも一緒に走っていた選手たちは、ゴールへと向かっていく。
黒沢悠太はゆっくりと立ち上がった。
そして、さっきよりも緩いスピードで走り出した。
12位だった。
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