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「でも、わざわざ部下使って来なくても、歓迎したのに」
くすくす笑う店長の視線は祥子になかった。
「…来たくて来たわけじゃない」
いつもとは、違う。
業務的な話し方をしていないから、誰がいるのか、一瞬解らなかった。
振り向くと、椎名が立っていた。
「あら、相変わらず無愛想ね」「仕事は済みましたか?」
店長には視線を合わせず、祥子に話し掛ける。
「あ…はい…」
なんだか、解らんが、わたしは凄い貴重な体験をしているのではないだろうか…
「それでは、用も済んだので失礼します」
「今度は、連絡してから来て。お茶位ご馳走するわ」
椎名は、返答もせずにスタスタと店を出て行く。
祥子も一礼すると、先に出て行った椎名を追いかけて、小走りでついて行く。
「…お腹空いてませんか?」
やっと追い付いて、隣に来た祥子に、ぽつりと呟いた。
「…はい。空いてます」
何だか空いてると言わなきゃいけない雰囲気で、取り敢えずそう答えた。
わたしがノーと言えないんじゃなくて、ノーと言わせない空気がある。
「お昼、行きましょうか」
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