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鉄仮面の上司の図が、どんどんと壊れていく。
「お待たせしました」
ランチが運ばれてきた。
手作り感漂うホットサンドに、スープとサラダ、珈琲。
「本田さん、早く食べないと時間なくなりますよ」
時計を見ると、もう一時を過ぎている。
買い物する時間が余りない。
「そんなに時間掛かる訳じゃないですし、時間なかったらなかったで、また別の日にするので、いいですよ」
「すみません、付き合わせて」
サラダを口に運ぶ手が止まる。
椎名さんが、謝った。びっくりだ。
「…いえ」
何とかそれだけ言うと、サラダを口の中に押し込んだ。
「今日は収穫がありましたから」
苦手な上司と距離が縮まっただけでも、来た意味があったと思う。
ホットサンドを口に入れながら、この喫茶店の雰囲気を噛み締めた。
ほっとするこの空気と、素朴な味。
その空間が、更に祥子の気持ちを暖かいものにしていた。
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