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「弱ったなぁ…」
知らない人にメールを送られ、その上携帯まで落とすなんて…。
次の駅で引き返してなかったら、携帯止めよう。
そんな事を考えて居た翔子の前に人が立った。
「あ…あの、携帯っ。これ貴方のですか?」
見上げると、眼鏡にコートとマフラーという真面目そうな男が携帯を差し出している。
「あぁ、あった!」
男から携帯をもぎ取る。
それから、男を疑う様な目付きで睨み付けた。
「貴方が、さ、さっき電車に乗るときに落としたんですよっ?」
取ったと勘違いされた男が顔を真っ赤にしながら反論する。
「イブナイトって知ってる?」
「イブの夜って事ですか?」
真剣に答える男に、翔子は頭をポリポリと掻く。
「いや、私が悪かった。わざわざ拾ってくれたのにお礼も言わなくてごめん」
「あ…いえ、いいんです」
少し控えめな笑顔で、男は会釈するとそのまま立ち去っていった。
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