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いつも賑やかな十夜の事務所はその日、珍しく静まり返っていた。
それというのも、先刻から結構珍しい依頼人がきているからに他ならない。
今日の依頼人、というか来客は馬巽だった。
馬巽は長い髪をヘアバンドで掻き上げ、両耳にピアスをしている切れ長の目が印象的な青年だ。
馬巽は天界と地獄の間に存在する、自然界に住む馬の一族で、実にシリアスな性格をしている。
今時異性と馴れ合う事を最も良しとせず、ふざけるのも冗談の類も嫌うので、どんなギャグも通用しないという強者である。
しかし相手が大阪弁だと、思わずかけ合い漫才に乗ってしまう癖もあり、決して憎めない、お茶目な部分もあるのだ。
そんな馬巽は何故か大阪弁を喋るのだが、十夜の方の式神である牛樹が使う生粋の大阪弁とは違い、口調には京都弁が少し混じっており、それが余計に礼儀正しさを強調する役目を担っていた。
そして馬巽は今日、真面目に依頼をしに、十夜の事務所を訪れている。
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