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あるビルの前で、煮物の入った容器を片手に佇む青年がいた。
彼の名は、敦象という。
少し長めの前髪を細い紐をヘアバンド代わりにして掻き上げて、たれ眼気味の瞳と、左耳にのみ月を模ったピアスをつけた結構な美青年だ。
しかし敦象は人間ではない、望月一夜を主に持つ式神である。
敦象は今現在、変わった環境下にいた。
敦象の主は探偵をしている、それも普通の探偵ではない。
普通の人間には解決出来ないような要素を含んでいる事件――この世界では化け物と呼ぶらしいが――、が関与している事件を解決する探偵事務所である。
敦象はその探偵事務所の助手と称して、一夜や他の十一の式神と事件を解決する日々を送っている。
敦象が佇んでいるビルの中にも探偵事務所があり、そこも同じような経営方針をたたえている。
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