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「蛇眼殿、お久し振りですね」
明らかに歓迎ムードではない蛇眼にも怯まずに、にっこり笑うのだが、蛇眼はそれを綺麗さっぱり無視して自分の意見のみを伝えるだけだ。
「帰れ」
そしてそのままドアを勢いよく閉めようとするが、それは敦象によって空しくも阻まれてしまう。
「蛇眼殿、あまり俺の事を邪険に扱わないで下さいよ。寂しいではないですか」
靴の先をドアに挟み、ドアノブを強く握っていようがお構いなしな蛇眼は、依然マイペースに事を進めようとする。
「離さないと、殺す」
そうして全く殺気を隠さないままに、普通の人間が目の当たりにしたら身震いする程の迫力で敦象を睨みつけた。
しかし敦象は空いた手で自分の顔の前に煮物の入った容器を差し出すと、更に言うのだ。
「これ、おすそ分けですよ」
それでようやく敦象は、部屋の中に入る事を許されたのだった。
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