第三章・―精霊の正体―

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「敦象、お前は気が付かなかったのか? あの旧校舎にいたのはただの幻だ」 「……ですが蛇眼殿、あの時確かに攻撃しようとした蒼輻殿を止めましたよね。“この人間を攻撃すればーー”と……。相手は人間だと、確かに言っていたではありませんか」  すると蛇眼はあからさまに長い溜め息を吐き、敦象を哀れむような眼で見てから肩に手を置いた。 「敦象、細かい事を気にすると。年寄り扱いする事になるが、それでも良いか?」  どうやら蛇眼は初めからこういう展開になる事を予想した上で、蒼輻と猿芝居とも言える演技を交わし用意周到にというか、無駄に敦象をはめたらしい。  ここにきて初めて蛇眼と蒼輻とのやり取りを思い出し、そしてそれぞれの台詞の本当の意味を理解した。  蛇眼はあの時、蒼輻に対して謝った筈だった。  そしてその時の敦象には、言葉の意味が理解出来なかった。
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