第三章・―精霊の正体―

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 蛇眼が謝罪した本当の理由は、手出しをさせなくて悪かったという意味ではなく、猿芝居に付き合わせて悪かったという意味だったのだ。  会話もなしに無意味な事をよくやるものだと、敦象が感心している間にも話はどんどん進んでいく。  蛇眼がまず、呆けている敦象を無視して、女の子の目の前に立つと何の遠慮もなく話しかける。 「アンタがあのあ……」  それは怯える女の子に対して配慮の欠片もない言い方で、途端に玄櫂が蛇眼を押し退け話に割って入った。 「悪いな。こいつ、悪いやつじゃあないんだけど、基本的には誰にでも容赦ないからさ。……で、本題なんだけど。あの精霊を呼び出したのは君かな?」  そのやり取りを見ていた女の子が玄櫂の問いに無言で頷くと、それを確認してから質問を重ねようとする。  そして背後では、押し退けられても懲りずに尚も何か言おうとする蛇眼の口を今度は朱梨が塞ぐと、同じ教室内の別々の場所で別次元の会話が始まる。
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