第三章・―精霊の正体―

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 そして今度は、蛇眼が玄櫂を押し退けて、女の子に言い放つ。 「どうしてこんな事をしたんだ?」  その声音には先程のものとは全く違う、とても優しい響きが含まれていた。  表情もいくらか穏やかで、こんな顔を出来るのならば最初からしておけと誰もが心の中で突っ込みを入れる程で、女の子はそれを見ていくらか安心したのか、玄櫂に告げようとしていた理由を蛇眼に告げる。 「……私、クラスの皆にいじめられていたんです」  少しでも衝撃を与えれば、消え入りそうな小さい声だった。  蛇眼は傍にあった椅子に腰かけ、女の子の表情を伺うと続ける。 「復讐したかったのか。……それで、クラスメイトを殺した」  女の子は黒髪をポニーテールにしてピンクのシュシュでまとめた。頬に少しだけそばかすがあるが、瞳も綺麗な薄茶の、よく見ると可愛いと言える部類の顔つきで俯いたままでいるのだ。
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