第一話・―消え失せた依頼―

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 そうした理由があれば、必然的に蛇眼が留守中の来客の対応をするのは目に見えている。  それでも外に出ようとしないのは、蛇眼の能力が人間に影響する類のものである事も災いしていた。  蛇眼は自身の瞳そのものを使って、自由に人間を操る事が出来るのだ。  無論、仕事の都合で人前に出る時などは瞳の能力を通さない、特殊なレンズをはめた眼鏡を常に着用しているのだがーー。  蛇眼の一族は蛇(神)一族で、本来の属性は闇属性である。  しかし蛇眼は、特異体質の上に突然変異の遺伝子を持って生まれた長の子だった。  そのため本来の一族にはありえない、闇属性と相反する光属性の能力も同時に持ち合わせていたり。  黒しか表れない筈の瞳の色が、右目には黄金色、左目には紺碧色をたたえていたりするのだ。  当然、一族の者はそんな蛇眼を嫌うようになり。生まれた時に蛇眼を庇った蛇眼の父親である前長は、母親、つまり自分の妻に殺される事となる。
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