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「ご、めんな、さい。ごめんなさ……」
「こんな事はもう、止めるんだ。君自身のためにもならないし、何より君が死んで喜ぶ人間なんか、この世には居ない」
蛇眼の女の子に対する呼び方が、いつの間にか“あんた”から“君”に変わっている。
そう気付いた敦象が、玄櫂に無言で説明を求めた。
それに気付いた玄櫂が、話を中断させない低い声で簡潔に説明を始める。
「蛇眼はな、事が面倒臭くなってくると一刻も早く終わらせようとして、逆に妙に細やかな気を使うようになるんだよ」
要するに蛇眼の天邪鬼の性格が、ここで見事に発揮された結果が目の前で展開している光景らしい。
普段はこれでもかというくらい、他の存在に対して全く無関心な筈の蛇眼が時々異様に面倒見が良くなったり、必要以上に優しくなったりするのには、実はこういう理由があったのだった。
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