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それからは一族の用意した土牢の中で半生を過ごし、そこから脱走して一時期盗賊の頭を経た上に現在に至るという、式神にしてはなかなか特殊な過去を持っていた。
それを知っている身としては、そんな相手に言われたくはないと少し苦笑して見せた。
すると蛇眼は席に着き、カップを一旦机に載せてから少し考える仕草を取ると、笑みを浮かべてわざとらしく肩をすくめる。
「……まぁ良い。分かった。但し、今回だけだからな?」
柔らかい態度をとりながらも一向に引かない敦象を前に、蛇眼がついに折れた。
机を人差し指でリズム良く叩きながらも、小さく溜め息を吐きながら、仕方なさそうに先を促す。
「どうも、ありがとうございます」
敦象はようやく話を進められると、にっこり笑いながら蛇眼が決めてかかる面倒事の内容を話し始めたのだった――。
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