654人が本棚に入れています
本棚に追加
「あのぅ、玄櫂殿? 悪魔の動きは、とっくの昔に止まっているのですが」
「……へ? あ、あぁ。本当だ」
バツ悪そうに玄櫂が微動だにしない悪魔を見ると、途端に朱梨が長い溜め息を吐いて玄櫂を馬鹿にした。
「なっさけなーい。北方守護獣玄武の地位に就いてるプライドとかない訳?」
「う、うるさいな。俺だって、出来れば格好良く決めたかったんだぜ。だけど、この悪魔の能力が凄過ぎるんだよ。蛇眼のヤツ、よく平気な顔をしてこんな奴と戦ってたよなぁ」
ようやく悪魔の攻撃から逃れられた実感が沸いたのか、玄櫂にもいつもの調子が戻ったようだった。
そのやり取りを見ながら、敦象が深刻な顔をして玄櫂に言う。
「玄櫂殿。俺、結構手荒な真似をして時間を止めているので。あまりこの状態にしておくのは、危険なのですが」
「あ、そうなのか。分かった、すぐやるよ。蒼輻、ちょっと手伝ってくれ」
敦象の深刻な顔を見ても軽い調子は変わらず、全く緊張感というものが感じられなかった。
最初のコメントを投稿しよう!