第四章・―一件落着―

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 それは蒼輻も同じで、無言で呼びかけに応じると、ゆっくりと蛇眼の怪我の治療をしている玄櫂の方へ行き、手伝う形を見せるだけだった。  これが彼らの強さからくる余裕の現われなのか、それとも本当に緊張感がないだけなのか理解しかねる。  そう敦象が思いあぐねている間にも治療はほぼ完了したらしく、小さな呻き声を上げて蛇眼が目をひらいた。 「……止まっているな」 「蛇眼にしては、かなり素直な感想だね」  最初の一声に、十夜が素直な感想を漏らす。  恐らく悪魔を見た上での感想だろう。  蛇眼は倒れた時の体勢のまま、玄櫂を見て呟く。 「玄櫂、お前。まだ動けるか」 「へ? あ、あぁ。動けるけど、何だよ」  蛇眼はそれで視線を悪魔の方へと戻すと、一呼吸置いてから問いに答えた。 「こいつを倒す」 「倒せるのか」  蛇眼は相変わらずの無表情だったが、怒りを相当抑えている様子なのが、その場にいる全員にも理解出来た。
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