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走っていると、学校の玄関に辿り着いた。直也との距離が離れない。何か策はないか……。
「ねぇ君、見ない顔だね?もしかして転校生?」
「そうです」
「玄関でばったり転校生に会えるなんて運命じゃん」
「いえ、運命とかはないと思います」
前方に男子二人、女子一人の障害発生。見た感じだと、一年生の男子が、女子をナンパしている。
朝から盛ってるなよな。いい迷惑だ。
ここで二つの道がある。一つは女子を無視し、華麗にかわして突破する。俺は無事。
もう一つは女子を助けてから、突破する。これはかなりのタイムロスだ。直也の速度を考えれば致命傷である。
「転校生だから、職員室だな。案内するよ」
「いえ、自分で……」
「ずりぃーぞ、お前!俺が恋の一歩目を……」
「邪魔だ!床と恋でもしてろ!」
「ぐわっ!?」
俺は一人の男子に、飛び膝蹴りをお見舞いした。
飛び膝蹴りの最中のできごとである。
まず、目元までかかっている前髪の長い女子が驚きの顔をしている。もう一人の男子も同様。
この後の着地が重要だ。普通の着地をしただけじゃダメだ。この勢いを殺さず、そのままにしなくてはならない。
俺は頭と背中を丸めて、前転するように着地を成功させた。
さすが俺!朝からこの動きはキレまくっている!ざまあみろ直也!
「隙ありぃぃぃ!」
「っう!?」
直也の声が聞こえたと思うと、後頭部に衝撃がはしった。俺は廊下を転がった。
「考えが甘いな、和輝」
「どんな運動神経してんだよ」
俺は声主を見る。俺の見上げた先には、無表情の直也が立っていた。
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