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「待てやー和輝!なんで逃げる!」
「はぁはぁ……ははぁ……はぁー」
待てやと言われて待つバカがどこにいるか。なんで逃げるかって?それはお前が、声を荒げているにもかかわらず、無表情で追い掛けてくるからだろ。
時間は朝。場所は学校。詳しい時間は朝のSHRが始まる前。詳しい場所は陵雲学園の東階段の二階。
俺は今、幼なじみで同じクラスの桐山直也に追い掛けられている。
なんで五階に逃げなかったのだろうと後悔している。一年生の教室がある五階は直也にしてみたら危険地帯だ。それに気付かず、下へ下へと逃げてしまったのは、階段は下りたほうが速いと思ってしまったからだろう。
三階の階段を下りているときに気付いた。
それは相手も同じだと。
俺は二階の階段を下りて、一階を走る。
「待てや!バカ和輝!」
直也との距離が縮まってきた。
今更、悔やんでもしょうがない。これから一階を通って、西階段から五階を目指すしかない。
さて、なんで朝っぱらから可愛い女子集団ではなく、中学校辺りから殺意を抱いた直也に追い掛けられているか。
もちろん俺に非はない。無罪だ。それを証明するために、俺が学校に来る前の記憶に戻ってみよう。回想スタート。
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