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朝飯を食べてから、千世と一緒に学校の準備を終わらせた。
「忘れものはない?ハンカチとティッシュは持った?」
「ママ、持ったのじゃ」
千世が母さんにハンカチとティッシュを見せた。
「千世ちゃんはいい子ねー」
母さんが千世の頭を撫でる。千世が母さんに抱き付いた。
「あらあら」
とか言いながら、母さんは千世を抱き締める。
どうやら千世は頭を撫でられるのが好きらしい。
毎朝、このやり取りを見ているから、さすがに飽きた。
俺は靴を履いたまま玄関に立っている。
「そんなに母さんといたいなら、家にいればいい。俺は学校に行く」
「和輝、そんな意地悪なこと言ったらダメよ」
母さんは千世を抱き締めながら、俺に言った。
「千世から、母さんとは離れたくないという気持ちが、ひしひしと伝わってくるんだけど」
「わしは学校に行くぞ」
千世は母さんから離れた。
「母親としては娘の意見を尊重して、黙って送り出すのが勤めだわ」
母さんはどこからか取り出したハンカチを目元に添えた。
「わかったわかった。千世、行くぞ」
「ママ、行ってくるのじゃ」
「無事、ママの胸に帰ってくるのよ~。和輝」
「何?」
母さんは床を見ていた目線をゆっくりと、俺の顔の位置へと移動させた。
「千世ちゃんに何かあったら……」
殺気を感じた。
「千世、早く行くぞ!」
俺は母さんの言葉を聞き終える前に、千世の腕を引っ張って家を出た。
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