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天趙はすぐに酒と料理を用意させ、張コウを上座へ座らせ自分は張コウの反対側へ座った。
張コウ「袁紹様の元へ挨拶に言ったようだがお変わりはなかったか?」
天趙「はい、袁紹様は頗る健康です。」
張コウ「そうではない、袁紹様が健全なのは当たり前だ。
私が聞いているのは作戦に変わりはないかということだ。」
天趙「はい…作戦は変わらず曹操本陣を陥落させ曹操を討ってから許昌・洛陽を落とすということです。」
張コウ「そうか…この戦…このままでは負けるな…」
天趙「張コウ殿!滅多なことを言ってはなりません!」
張コウ「天趙よ…現実をみよ…我が軍は既に曹操に勝ったかのように思っている。
しかし現実には曹操軍は追いつめられているようで実は初戦とその後の小競り合いには全て勝利している。
官渡まで圧してきているのではなく官渡まで誘い出されたのだ…」
天趙「そんな…その事を袁紹様は?」
張コウ「もちろん気付いてはおらん…田豊や沮授は気付いているだろうがな。」
天趙「……………………………………」
張コウ「天趙よ、時勢をしるのだ。私は元は韓フク配下の将だった。
しかし袁紹の言に惑わされ城と妻子を捨てて逃げ出した…
そのとき私は韓フクを見限り袁紹の配下となった。
その袁紹も既に英雄の器ではなく、ただの凡将に成り下がった。
私はこのまま高覧と共に軍を引き連れて曹操に降ろうと思っている。
天趙…お主も来ぬか?」
天趙「私は…私はどうしたらいいのか解りません…」
張コウ「そうか…私は明後日の巳の刻に曹操の陣へ向かう。
それまでに覚悟が決まったのなら来い。」
天趙「はい…」
張コウ「いい返事を期待しているぞ。
それではな」
張コウはそう言うと陣幕を出て行った。
天趙は父のように思っている袁紹を裏切ることになるかもしれないことに苦悩しその夜は眠れなかった。
眠れずに明けた朝、天趙は陣幕をでて馬を走らせた。
そして対岸にある曹操の陣が見えるところまでくると天趙は馬を下り曹操の陣に拝礼をした…
天趙は曹操に降ることを決意したのだった…
二日後・巳の刻
張コウは予定通り四万の軍を率いて陣を発った。
名目は曹操軍への攻撃であるが、実際には降伏し反転、袁紹軍へ攻撃を仕掛けることになっている。
張コウ「ふぅ…結局天趙は来なかったか…
しかしもう私の決意は変わらん。
ん?砂塵か…?
全軍!戦闘の準備をしろ!」
張コウは先に見える砂塵に備えて戦闘の準備をさせた。
張コウ
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