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張コウに向かって馬を駆けた。
キィィィン
キィィィン
キィィィン
刃のぶつかり合う音が響き一進一退の攻防が続いた。
張コウ「やはり袁紹軍随一とまで言われた武だ…しかし私とて幾多の戦場を戦い抜いてきた!
こんなところで負けはせんぞ!」
張コウは自分自身に言い聞かせるように言い放った。
天趙「張コウ!袁紹様より受けた恩義を忘れ私利私欲の為に裏切らんとする行為…
この天趙が許しはせぬ!」
天趙は張コウの行動を非難し激情を煽った。
一騎打ちというのは武将の武力が第一だが冷静さも必要なのである。
天趙は張コウを激情させ討たんとしていた。
天趙の作戦は的中し張コウは猛り狂った。
張コウ「許さぬぞ!
私を中傷したこと…
あの世で後悔するがいい!」
張コウは激情し天趙に迫った。
その瞬間、また天趙が眼前から消えた。
張コウ「なっ…どこだ!」
張コウは天趙の姿を探した。
その時、微かに何かが地面に着地する音を聞いた。
張コウは音を聞くやいなや振り向き馬を駆けた。
張コウ「天趙…貴様が烏丸に行っていたことを忘れていた。
北方の騎馬民族…その騎馬の技術を盗んでいたとはな…
だが終わりだ!」
張コウはまだ背を向けている天趙に切りかかった。
キィィィン
刃のぶつかり合う音が木霊し一瞬の静寂が辺りを包んだ。
天趙「おみごと!
我が技を見抜き一瞬の判断で切りかかる判断力…
もはや生半可な武では討てませんな…
これより本気で討たせていただく!
その刹那、天趙の覇気が変わり張コウは冷や汗をかいた。
張コウ「震えている?
この私が震えているだと!?」
張コウは震えていた。
幼少から武芸を学び、一度戦場にでれば鬼神の如き立ち回りで数多の戦場を駆けた張コウが一人の将を前にして身震いをしていたのだ。
張コウ「ありえん…
私が天趙を恐れているだと…」
張コウがそんな心境に陥っているとき天趙はゆっくりと振り向き張コウに向かって馬を駆けた。
天趙「張コウ!
覚悟!」
天趙は得物の長刀を張コウに振り下ろした。
張コウは防ぐ間もなく斬られるかと思った。
その時
ジャァァァン
ジャァァァン
けたたましく銅鑼が鳴り袁紹軍本陣から煙があがった。
天趙は振り下ろした長刀を止め呆然としていた。
張コウはその瞬間を見逃さなかった。
張コウは天趙を刺そうと思えば刺せた。
しかし背を向けて逃げていた。
顔を涙で濡らし一心不乱に…
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