官渡の戦い

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戦場で敵に背を向けて逃げるを恥とすることはよく知られている。 しかし、張コウはそんなことは気にせずただただ逃げた。 天趙が見えなくなるまで… そして………叫んだ。 叫ぶと言うよりは絶叫に近かった。 自らの不甲斐なさを呪い泣き叫んだ。 一方天趙はまだ呆然としていた。 その時、一人の武将が声をかけた。 ?「獅羅!何をしている!本陣に異変だ! 袁紹様の危機だぞ!」 その声に天趙は我にかえった。 天趙「沃砕…私はどうしたら…」 沃砕「決まっている! 袁紹様を救いに行くぞ!」 天趙「そ…そうだな… 全軍!反転し本陣へ参る!一刻を争うことだ!脇目を振らずただ本陣を目指せ!」 天趙軍兵士一同「おぉぉぉ!」 天趙は急いで本陣への道を駆けた。 一度は裏切ると決めた君主… 自らを息子と言ってくれた父… 天趙は袁紹を父と思い、袁紹は天趙を息子と思う。 たとえそれが偽りでもかまわない。 仮初めでも息子と言ってくれたことに天趙の忠義がよみがえった。 天趙「沃砕!足の速い一隊を率い先に向かえ!」 沃砕「御意! 騎馬隊は我に続け! 敵を蹴散らし獅羅を待とう!」 沃砕は一言叫ぶと先陣をきり駆け出した。 その後を天趙軍精鋭騎馬隊が続く。 天趙は足の遅い歩兵隊を率い本陣を目指した。 天趙が本陣に到着したとき本陣では激戦が繰り広げられていた。 先についていた沃砕も奮戦していた。 天趙「雷核!杏泉!倭劉! 袁紹様を見つけ身辺を警護せよ! 敵がくれば好きに斬ってかまわん!」 雷核「御意!」 杏泉「わかったわ!」 倭劉「あいよ!」 雷核・杏泉・倭劉は天趙の声とともに駆け出した。 沃砕・雷核・杏泉・倭劉は天趙軍四天王であり、一騎当千と言われるほどの腕前であった。 天趙も兵士に檄を飛ばし曹操軍になだれ込んでいった。 戦いは一刻を経過してもおさまることはなく、曹操軍と言わず袁紹軍と言わず次々に倒れていった。 雷核・杏泉・倭劉は袁紹を見つけ近づく敵を薙ぎ倒していた。 沃砕・天趙は敵軍に切り込み奮戦していた。 その時…後方に砂塵があがった… 天趙「あれは…曹操軍の後詰めか…」 天趙はしばし呆然とした。 今袁紹軍本陣は大混乱している。 こんな状況で後詰めに入られればそれこそ壊滅的打撃を受け撤退を余儀なくされてしまう。 天趙は考えた。 考えられるだけの策を考え、実行可能な策だけを考えた。 そして導き出した答えは……撤退だった…
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