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「大丈夫だって~、パパは心配性だなぁ。転びそうになったら空中回転で着地するから」
「バカ!冗談言ってる場合か!転んでお腹打ったらどうするんだよ。お前一人の体じゃないんだから、頼むから気をつけてくれよ」
翔太は口を尖らせた後、大きなため息をついた。
「だから~、空中回転するからぁ~」
「そんな事できるかよ!」
「え~、運動神経いい私なんだからできるよぉ~。ねっ、ちさちゃん」
「うん!ママならできる!」
「できません!」
呆れ顔の翔太を見て、ケラケラと笑う私。 私につられて千咲も「キャハハ!」と声を上げて笑う。
――今、私のお腹の中には小さな小さな命が芽生えている。 私と翔太の大切な新しい命。
私は今、心から言える。「幸せです」 そう、心から言える。
この先、何があっても翔太の手を離さない。子供達の手を離さない。 私の守るべきものは、ここにあるから。 心から笑える日々の大切さを知ったから。
優しいKissをしよう。安らぎのKissをしよう。
あなたとの美しい記憶は、この胸に閉じ込めて…
…永遠に閉じ込めて…。
「ママ、ほらほら!小さなお魚~!取って取って!」
愛する娘が、はしゃぎながら川を覗き込む。
「よし!ママに任せなさい!」
娘の横に並び、膝をついて水の中に手を入れる。
「だから、四つん這いはやめろって!そんな簡単に手で取れるわけないだろ」
翔太は私のお尻を軽くペチッと叩いた。
「だったらパパが取ってよ~」
「パパ取ってぇ~!」
翔太が笑う。 千咲が笑う。 私が笑う。
キラキラ光る静かな川のせせらぎ。 頬に触れる清々しい風の旋律。
私たちは手を繋ぎ、いつまでも歌い続ける。
笑顔と幸せに満ちた歌を。
不変の愛に満ちた、幸せという歌を――。
【END】
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