二人の関係

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 私達の関係が始まったのは半年前。初めて体を重ねたのは、花見の宴の夜だった――  内科病棟に勤務する私と外科医である彼とは、もともと接点はなかった。けれど、昨年の冬、私が担当していた患者がイレウス(腸閉塞)を起こし、内科的処置をしても改善がみられない為に手術適応となった。  その時に外科の主治医となったのが彼だった。一時的に外科転科とはなったが、基本疾患が内科フォローであったため、内科と外科の二科で診ていく事になった。  そのため、普段は訪れない私の病棟に、彼は足繁く通った。同じく、その患者の担当であった私は、必然的に彼と関わる機会が多くなったのだ。  手術が無事終了し、経過も順調。やがて担当していた患者は退院の日を迎えた。  彼の外科医としての怯まない迅速な対応と、冷たくも感じる常に冷静沈着な大人の雰囲気。そして、不意に見せる優しい笑顔。  彼が病棟に姿を見せなくなったことで、私は少し淋しさを感じていた。
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