亀裂

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「行ってくんよー」  こんなバタバタした朝にも最早慣れたもので、流れるような手つきで自転車の鍵を取る。  キーホルダーとしてお茶犬が付いているのだが、色褪せていて可哀相だ。  雨の日や風の日も、鍵の取り忘れで外に放置していたからだろう。  そんな事を考えながらいつもの様に、長い階段を駆け降りた。この階段もなかなか危険で、幾度となく弁慶の泣き所にくぼみを作らせたものだ。  危うくまた一つ、名誉の勲章を増やしてしまいそうになりなったが、無事に自転車置き場へ辿り着いた。  カシャン、という軽快な音を響かせ、後輪のロックが外れる。  今日も退屈だが、有意義な学校生活が当然のように過ごせるものだと確信していた。 .
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