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空は嫌になる位に晴れ渡った青空が広がっていた――。
その空を見上げる僕の心は曇り空…。
「…もって…後3ヶ月です」
唐突に告げられた残酷な宣告に…、その場に居た者は皆、言葉を失った…。
そんな状態でも、白衣を着た医師は続ける。
「…辛い事だとは存じております…。この事は…ご本人には内密になさった方がよろしいのでは?」
医師の提案は最もで、その場に居た者は誰も異議を唱える者はいなかった。
…それしか…、方法がないと熟知していたからこそ、誰も意見を出さない。そんな雰囲気を察した医師は、辛そうに眉を寄せた。
『もう助からない』
医師の表情で悟ると、一層空気が張り詰めていく。
3ヶ月という短い時間しか…、我が子には残されていない――。
それを再認識させられ、無力すぎる自分達が…、なによりもちっぽけに思えた。
「息子は…この事を…、察している様でしたか…?」
声が震え、途切れがちに紡がれた言葉に、医師は一度、瞳を閉じた。
「…御本人には悟られぬ様にしておりますから、今の処は大丈夫でしょうが…。万一、気付かれると…、生きる気力を失ってしまうやも知れません…」
「…そう、ですね…。この事は決して、悟られぬ様にして下さい…」
「了承しました。御子息様が不安がらぬ様、私共も、精一杯努めさせて頂きます」
「えぇ…頼みます…」
医師と父の会話を、ただ聞くだけしか出来ないでいる母は、ひたすら泣くしかなかった。
部屋には母のすすり泣く声が木霊するだけで、それ以外は静かだったのを覚えてる…。
沈黙を破ったのは、医師の言葉だった。
「息子さんに面会されては如何ですか?…御本人の為にも…」
医師の提案に、一瞬黙って居たが、父は答えた。
「…そうだな。夜音の為に…皆で面会に行こうッ!なッ!?」
母「…えぇ…」
星「……」
その場の雰囲気を明るくさせようと、父は必死に笑いかけると、母は涙を拭い、小さく呼吸を整え頷いた。
それを確認すると、父はずっと黙ったままの我が子に苦笑し、医師に視線を向けた。
「…では…、私達はこれから夜音の病室に行って来ます…。悟られないように要注意しながら…ですが、少し話をしてきますので…」
「――判りました」
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