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夜音が入院してからというもの、気持ち的にも落ち着かず、毎日が荒れ放題だった。
学校にもあまり行かず、何処かにフラリと遊びに行く。そして夜遅くに帰宅。
そんな事を繰り返していく内に、病院へ通う事がなくなっていった。
******
「…見舞い、行かないのか?」
後ろからかけられたそれに、俺は振り返らずに一言だけ告げた。
「…行かない」
父さんの顔を見なくてもわかる。驚きと不信がっているのが…。
「なんでだ?夜音はお前の…」
「だからだよ…」
「…?」
「アイツと兄弟だから…、双子という特別な絆があるから…この先の結末を‥、確信にしたくない‥」
「…………」
父さんは何も言わずに黙って聞いてくれた。
「…もぅ‥、ほおっておいてくれ……」
喉が痺れた様な感覚に、気持ち悪くて苛々した。そして、掠れて出た声にも苛々した。
「…夜音が待ってる。お前が来るのを…」
「――っ、……!」
バタバタッと、階段を駆け上がり、自室に飛び込んだ。
「は、…はぁ…ッ!」
荒い呼吸を鎮める術を知らず、喉元に指を這わせた。
「………、」
『夜音が待ってる。お前が来るのを…』
頭の中に反響している父さんの言葉が、俺の動悸を激しくした。
逢いたい気持ちがあるのに逢えない。この気持ちが、誰に分かるだろうか――?
逢えば叫ぶかもしれない………。
『何処にも行くなっ!』
そう叫び、抱き締めて、2度と離れないかもしれない。
『辛い?なら哭けよ』
って促すかもしれない。 その言葉は夜音にとって救いになるか、或いは…。
「――…ごめんな‥、無力で、ごめんっ…」
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