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「………」
じっと夜音を見つめていると、その視線に気付いた夜音は小首を傾げた。
「‥ん?なに?」
さらっと滑り落ちた夜音の髪は、日の光に当てられ、キラキラ光輝いて見えた。
「――‥いつもと同じ青に‥、よく飽きもせずに見れるなぁって思っただけ‥」
視線を反らして、俺は少し皮肉気味にいい放った。
「‥‥ぅん。でも……」
途端に肩を落とし、今にも泣き出してしまいそうな声色で言葉を濁らせた――。
「……なんだよ…。何が言いたいわけ?」
夜音に視線を移し、冷たく問い掛けると、あからさまに肩が震えた。
「……何でもない…」
そんな訳ない筈なのに、夜音は何も言おうとしない…――それが余計に、俺を苛立たせた。
「‥ッ‥言えよ。なんだよ‥ッ‥」
――何でこんなに苛立つんだ…。別に夜音とは喧嘩になるような事は言ってないし…、何なんだよっ!!
「――…ッ…」
気を紛らわせようと、視線を部屋に飾られた写真に向けた。
すると、夜音が。
「…懐かしいでしょ?それ…僕と星が海に行った時のだよ…。」
「……なんで今更こんなの飾ってんだよ…」
「…ん、と…。何て言うのかな‥?その写真を見てるとさ、なんか胸がポカポカするんだよね‥」
寂しげに…、言ってしまえば…儚げに笑う夜音を見ていると、胸が締め付けられる思いがした。
「…最近の写真でもいいだろ…。」
呆れながらそう言うと、夜音はまた苦笑した――。
「…そうだね…。でも‥‥」
と、ここでまた言葉を濁らせ、俯いた。
「‥‥最近は‥‥」
『戸惑い』を感じらせる夜音の途切れ途切れの言葉に、俺は夜音の事を熟知しているようで、実は全然知らないということを実感させられ、悔しさで下唇を噛んだ。
「……最近の写真…、はね…、まだ‥駄目なんだ‥」
そう一人言の様に、ただ小さな声で言う夜音に…、怒りで肩が震えた。
「…何が?さっきからなんなんだよッ…?お前はさっきから何が言いたいんだよっ?!」
完璧に八つ当たり――。
「…せ‥、い…?」
驚きに目を見開く夜音にはお構いなしに、俺は声を荒げた。
「空ばかり見て、こんな何年も前の写真にこだわってッ!!!何が言いたいんだッ?!言え!言えよッ!!」
「…?!星音‥?なに…?どうしたの?!」
『どうしたの?』
そんな事、俺だって訊きたい――…。
なんでこんなに苛つくんだよ……。
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