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アーケードはイルミネーションに彩られ、店先にはクリスマスツリーが飾られ、雨は夜更けすぎに雪へと変わるだろう的なクリスマスソングが流れ、それに誘われるように人も集まってくる。
この季節は、どんな田舎の商店街でも賑やか且つ華やかな通りとなる。
そんな商店街を、マイナスオーラとネガティブイオンを振りまいて歩く男が一人。
他でもない。
勅使河原祐樹その人だ。
(あー、この商店街爆破してぇ)
口に出せばどう考えても危険人物として捕まりそうなことを、心の中で思う。
いつもは温厚な祐樹も、今日ばかりは気が立っていた。
人の流れに逆らうように商店街を歩いていると、足は踏まれ、肩をぶつけられ、舌打ちをされる。
周りを見れば、クリスマスプレゼントだろう熊さんのぬいぐるみを抱えた少女とその家族。さらにはラブラブベタベタしているカップル。
祐樹には、周りにあるもの全てが幸せそうに思えた。
だから余計に腹が立つ。
八つ当りも甚だしい。
そんなんだから彼女が出来ねぇんだよ。
(早く用事を済ませて帰ろう)
目当てのフライドチキンチェーン店を目指し、祐樹は足を早めた。
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